
「ピンサロ(ピンクサロン)は違法なのか」という問いは、はい・いいえで答えられるものではありません。ピンサロは営業許可を取らずに営業しているわけではなく、実際には飲食店の枠で許可を受けて営業しています。問題になるのは、その許可の種類と、店内で実際に行われていることが食い違っているという点です。この記事では、ピンサロがどの法律のどの枠で営業しているのか、摘発されたときに店側・客側がそれぞれ何の罪に問われるのかを、条文に沿って整理します。
ピンクサロンが摘発されるケースについて下記サイトで詳しく解説されています。
ピンサロはどの法律の枠で営業しているのか
まず前提として、ピンサロは「性風俗関連特殊営業」ではありません。ソープランドやファッションヘルスは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)にもとづく性風俗関連特殊営業として、公安委員会への届出を出して営業しています。しかしピンサロという業態は、この届出の対象として制度上想定されていません。
そのため多くのピンサロは、飲食店営業許可に加えて、風営法の1号営業(接待飲食等営業)の許可を受けて営業しています。これはキャバクラと同じ枠組みです。つまり、法律上は「客に飲食を提供し、接待をする店」として許可を受けていることになります。
問題になるのは「許可の枠を超えたサービス」
1号営業の許可のもとでは、店内で客にわいせつな行為をさせることは、各都道府県の風営法施行条例で禁じられています。したがって、接待飲食店として許可を受けた店内で実態として性的なサービスが提供されていれば、その部分が風営法違反として摘発の対象になります。「無許可で営業しているから違法」なのではなく、「受けている許可の範囲を超えたことをしているから問題になる」という構図です。
この点は、届出をして営業しているソープランドやデリヘルとの決定的な違いです。届出のある業態は、何をどこまで提供してよいかの枠が制度の側にありますが、ピンサロにはその枠がありません。
売春防止法はどこまで及ぶのか
ピンサロの話題では売春防止法がよく持ち出されますが、条文を読むと構造が見えてきます。同法第3条は「何人も、売春をし、又はその相手方となつてはならない」と定めており、売る側だけでなく買う側も名指しで禁止されています。
ただし、この第3条には罰則がありません。罰則が置かれているのは第2章「刑事処分」の第5条以下で、勧誘、周旋、困惑等による売春、対償の収受、前貸、売春をさせる契約、場所の提供、売春をさせる業、資金等の提供といった行為が対象です。いずれも売春を勧誘・斡旋・管理する側の行為であり、売買春そのものを処罰する条文は置かれていません。売春に至った人を刑罰ではなく保護の対象として扱う、という立法の考え方にもとづくものです。
したがって、売買春をしたこと自体を理由に客が起訴されることは、通常は起こりません。ただし相手が18歳未満だった場合はまったく別で、児童買春・児童ポルノ禁止法違反として厳しく処罰されます。また、ピンサロは本番(性交)を伴わないことを建前としており、対価を得て性交する行為を指す売春防止法上の「売春」の定義に、そもそも当たらない場面も多くあります。
【ここが誤解されやすい】
「売春防止法があるから、買った客も逮捕される」という説明を見かけることがありますが、条文上そうはなっていません。客が実際に問われるのは、次に述べる公然わいせつ罪です。
客が問われるのは公然わいせつ罪
摘発で立件され得るのは、店の経営者や従業員だけではありません。その場に居合わせた客も対象になり得ます。ただしその根拠は売春防止法ではなく、刑法174条の公然わいせつ罪です。
なぜ「公然」になるのか
公然わいせつ罪は、不特定または多数の人が認識し得る状態でわいせつな行為をしたときに成立します。ここで効いてくるのがピンサロの店内構造です。ピンサロは、壁で仕切られた個室ではなく、ソファ席をパーティションやカーテンで区切っただけの空間に、複数の客と女性が同時にいる形態をとっている店が少なくありません。そのため「他人が認識し得る状態だった」と判断されやすく、個室で行われるソープランドやファッションヘルスとは、この点で法的な扱いが分かれます。
当サイトの東京における「売春」の合法性の解説でも同じ整理をしています。ピンサロで問題になるのは公然性であって、対価の授受そのものではありません。
摘発されたときに実際に起きること
店内で摘発が行われた場合、その場にいた客も身元確認と事情聴取の対象になります。客が全員逮捕されるとは限りません。事情聴取だけで帰されることもあれば、書類送検されることもあり、最終的な処分は事案の内容によって分かれます。ただし、外国人旅行者の場合は、事案によっては在留資格や出入国管理上の措置に影響する可能性がある点に注意が必要です。日本の法律は国籍を問わずすべての滞在者に適用されます。
いずれにせよ、旅行中に警察署で長時間の事情聴取を受ける事態そのものが、旅程にとって大きな損失になります。摘発される確率がどの程度かを見積もるより、そもそも公然性が問題になり得る形態の店を避けるほうが確実です。
旅行者がリスクを避けるための実務
ここまでの整理をふまえると、旅行者が取るべき対策ははっきりしています。「違法な店を見分ける」のではなく、そもそも法的な枠がはっきりしている業態を選ぶことです。
客引きについていかない
歌舞伎町や池袋の路上では、客引きが声をかけてくることがあります。東京都の条例では公共の場所での客引き行為そのものが禁止されており、客引きに従ってたどり着いた店は、料金体系が不透明だったり、あとから高額な請求をされたりするリスクが高くなります。「安く遊べる」「今なら特別料金」といった呼びかけには応じないでください。詳しくはぼったくり被害を未然に防ぐチェックリストを参照してください。
届出のある業態を選ぶ
ソープランド、店舗型ヘルス、デリヘルは、いずれも風営法にもとづく性風俗関連特殊営業として公安委員会に届出を出して営業しています。届出のある業態は、提供してよいサービスの枠と、守るべき営業時間・広告規制が制度の側で決まっています。ピンサロにはその枠がなく、店ごとの運用に委ねられている点が本質的な違いです。業態ごとの違いは日本の風俗店全11種の解説にまとめています。
料金を先に確認する
入店前に、コース料金・指名料・そのほかの追加費用の総額を確認してください。外国人旅行者の場合は、言語が通じにくい状況で金額の説明が省かれることがあります。金額が事前に明示されない店には入らない、という一線を決めておくだけで、多くのトラブルは避けられます。予算の目安については東京の風俗予算ガイドで解説しています。
よくある質問
Q1: ピンサロという業態そのものが違法なのですか?
A1: 違います。ピンサロは飲食店営業許可と風営法の1号営業(接待飲食等営業)の許可を受けて営業しているのが一般的で、店の存在自体が無許可・違法というわけではありません。問題になるのは、その許可の枠を超えて店内で性的なサービスが提供されている場合で、その部分が風営法違反や公然わいせつ罪として摘発の対象になります。店ごとに運用が違うため、外から一律に判断することはできません。
Q2: ピンサロを利用したことがあり、不安なのですが?
A2: 単に利用したというだけで、その後さかのぼって立件されることは通常ありません。摘発は現場で行われるためです。もし何らかの形で警察から連絡があった場合は、自己判断で対応せず、速やかに弁護士に相談してください。日本には当番弁護士制度があり、逮捕された場合は1回無料で弁護士を呼ぶことができます。
Q3: ピンサロとソープランドは何が違うのですか?
A3: 制度上の枠組みが違います。ソープランドは公衆浴場法にもとづく営業許可に加えて、風営法の店舗型性風俗特殊営業として公安委員会に届出を出して営業しています。ピンサロはこの届出の対象ではなく、接待飲食店の許可で営業しています。もう一つの違いは店内構造で、ソープランドは個室で行われるため公然性が問題になりにくいのに対し、ピンサロは仕切りだけの空間が多く公然わいせつ罪が問題になり得ます。なお、届出があるからといって、ソープランドで性的サービスの提供が法律上認められている、ということではありません。
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